ICOM CT-17 CI-V インターフェースのトラブルと問題点
2012.10
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http://ict-kuwa.net/ct18.html
友人から、IC-7800とIC-PW1を接続して使っていて、CI-V通信にCT-17を追加するとエキサイターとリニアアンプが
同期しなくなるトラブルの相談を受けた。
ICOMのCI-Vインターフェースは、シリアル通信(物理レベルがRS-232CのTTL版)でありマーク:+5v、 スペース:0Vである。
送信データ(TXD)と受信(RXD)を直接接続して、2ワイヤーでの通信になっている。
CT-17は、MAX232を1個使った、RS-232C対TTLのレベルコンバーター。 入出力は、一方がDSUB25のRS-232C、
他方が4個の3.5mmイヤホンジャックTTLレベルになっている。
CT-17の回路を調べてみると、 DSUB25のRS-232C側は、MAX232のTXDとRXDがそのまま2,3番ピンに接続、RTSと
CTS(4番ピンと5番ピン)が 直結されている。 3.5mmイヤホンジャックのTTL側は、MAX232のOUT(12番ピン)と
IN(11番ピン)を直結し、1μHと100PFの フィルターを経由して接続。
IC-7800を持っていないので代わりにIC-7000の回路図とIC-PW1の回路図を見ると、インターフェース回路は、両方とも
送信はNPNトランジスタのオープンコレクタ、受信はPNPトランジスタのベース電流をON/OFFしている。
CT-17 CI-V インターフェースの問題点 通信を行うときに、
(1) CT-17がエキサイター等に送信するときは、
負荷がオープンコレクタのトランジスタとトランジスタのベース電流のスイチングであり問題ない。
(2) ICOMの機器(トランシーバーまたは下駄等)がデータを送信する時に
論理0(概ね+1V以下)にするには、CT-17の無通信時はMAX232の送信ピンから論理1(+5v)が出力
されているため、MAX232の送信全ドライブ出力電流を吸い込んで、論理0(概ね1V以下)まで強制的に
落としてやらなければならない。。
MAX232のTTL側出力のショート電流はデータシートを見るとTYP30mA、Max100mAであり、これだけの
電流を吸い込む必要がある。(MAX232シリーズのIC個々での違いはあるので一般論として)
IC-7000のデータ送信回路を見るとトランジスタ2SC4081のベース抵抗は12kΩ、Vcc=3vであり通信ラインを
ON(Low)のときのIbは約220μAになる。
トランジスタのhfeが100のときIc≒22mA程度、hfeが200のときIc≒45mA程度までは何とか吸い込めそうだ。
Ib=220μA、IC=50mAの時のC-E間電圧は0.2v程度でOKだが、ICが60mAを超えるとC-E間電圧は2Vを
超え、通信できないことになるだろう。シリアル通信ICの論理1,0のスレシホールド電圧は一般に1.5v前後。
ICのばらつきで、出力短絡電流が大きい物は、通信が不安定になったり、通信ができないことになる。
(2SC4081のhfeは、120~560)
2SC4081のコレクタ損失(絶対最大定格)は200mWであり、C-E間電圧2v×100mA=200mWとなり
この点でもやばーーいかも!!
IC-PW1データ送信回路を見るとトランジスタ2SC4116のベース抵抗は18kΩであるが、Vcc=5vでありIC-7000と
ほぼ同様である。
(2SC4116のhfeはY:120~240、 GR:200~400、ただし最大コレクタ損失100mW!)
IC-7800の回路定数が不明なので、明らかではないがベース抵抗がこれより大きい可能性もある。
(ICOMが途中で改修した噂もある)
MAX232とドライブするトランジスタへのストレスも心配だ。
ちなみに、友人は、MAX232がよく壊れるので、いつでも交換できるように、ICソケットを追加して壊れたら
その都度、交換していたそうだ。
対策について
メーカーでの修理は受けられなくなると思うので、自己責任でやってください。
(1) 簡易な対策
抵抗を1本挿入する
CT-17のMAX232出力(12番ピン)に1~2.2kΩ(1/10wのチップ抵抗でも可)程度の抵抗を直列に挿入する。
これで、すべての機器間通信が正常になります。
抵抗値は、小さすぎると効果が少ないし、大きすぎるとMAX232出力のドライブ能力が不足になります。
改修方法は、MAX232の12番ピンの足をニッパーで切断して抵抗を追加するか、またはプリント基板の
パターンをカットして追加します。
プリント基板のパターンカットをして、抵抗を挿入する場合は、11番ピンと12番ピンの間のパターを切断する。
12番ピンに入っているパターンを切断しした後に、ジャック側パターンに、11番ピンと抵抗の片端を接続する。
抵抗の残った片端と12番ピンを接続する。
11番ピンと12番ピンがつながった状態で、3.5mmジャック側に抵抗を入れた場合は、CT-17のTTL側受信が
動きません。 (ちょっとしたところで手抜きはだめですよ(^o^))
(2) まともな対策
①ダイオードを挿入する
(1)の抵抗の変わりにダイオードを使います。俗に言うダイオード・ワイヤードオアーにします。こちらの方が
まともで、玄人的でしょう。
使うダイオードは、順方向電圧降下(VF)が10mAの時に0.5v以下を目安に出来るだけ電圧降下の小さい
ものを選定します。
(一般的にダイオードの順方向電圧降下(VF)は、流れる電流が小さいほど電圧降下が小さくなります。)
ダイオードの向きは、MAX232のTTL側送信ピン(12番ピン)に流れ込む方向に取り付けます。
半田付けに自信があれば表面実装用のチップタイプで、ショットキーバリアダイオードあたりが適当です。
整流用のシリコンダイオードは、電圧降下が大きいのでNGですよ。もちろん、替わりにLEDなんてのもNG。
ちなみに私は、秋月のショットキーバリアダイオード(30V200mA)BAT43
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-03013/ や 1mA時のVF=0.2vのSS2040FL
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-02073/ を最近はよく使っています。
CT-17以外でも携帯電話メモリー操作用インターフェイスなどのように、ワイヤードオアを想定していない
物でもこの方法が使えます。
②CT-17のTTL出力側をトランジスタのオープンコレクタ(オープンドレイン)でドライブするように改造する。
この場合は、トランシーバーやIC-PW1のように、インバータ+スイッチングトランジスタでの構成が
一般的でしょう。これが1番まともな方法ですね。
結論
以上は、ICOMのCT-17インターフェースの問題点についての検討ですが、ICOMのCI-V(CIV)インタフェースは、
2本の線で複数機器の通信をバス的に(並列に)接続してシリアル通信を行う事を想定している。
したがって、送信側の最低条件として、ワイヤードオアにする(上記のダイオードによる簡易法、
オープンコレクタ またはオープンドレインで出力する)必要があるが、CT-17はこの条件を満たしていない。
アナログ携帯電話のメモリー操作用USB~TTL変換ケーブル、また、一般的なUSB~TTL変換や RS-232C~TTL変換でも
通常はワイヤードオアーの対応になっていないので、注意が必要だ。
これらの物をCI-Vインターフェイスに接続するのは、誤った使い方である。特に複数の通信ポートを 接続
する場合は、動作しない、または動作が不安定になる可能性が大だ。
特に1対1の時は正常に動作しても、3台(3ポート)以上になると不安定、動作しないことを想定した方が 妥当と思われる。
今後、パソコンとICOMの無線機器をCI-Vで接続することが多々想定されるので注意してほしい。 PCのプログラムを
複数立ち上げて、複数ポートで通信することも一般的になり、この場合も同様である。
ハムログ+HAMradioDelux+通信ソフトになると、PCの3ポート+エキサイター+リニアアンプ=5ポート になる。 Yaesu、
Kenwwodについても、別項で総合的に解説しているので参照ください。
追記:
アナログ携帯電話のメモリー操作用USB~TTL変換ケーブル(UP-12C)が手元にあったので、出力短絡
電流を測ってみました。
結果は約1.5mAでした。これならICOMの機器にダメージを与えることはないですね。。
(黒:GND、緑:TXD、白:RXD、赤:携帯充電用電源5v、 InterfaceIC:87C52)
[2012.12.25]追記 反響が想像以上に多いので、改造場所の回路図を追加します。改造は自己責任で行って下さいね。
MAX232が壊れて交換する時は、ポンピング用コンデンサ(C5~C8)も交換しましょう。22μFは初期のIC用で、
現状では、MAX232が1μF、MAX232Aおよび互換のADM3202は0.1μFになっています。22μFのままで
現在流通しているICに交換した場合は、初期の物よりポンピング周期が高速になっているはずなので、
再度、短期間でお亡くなりになるかも??
[2013.01.09]追記
USB-仮想シリアルポートの変換ICや1chipマイコンのシリアルポートをCI-VのBUSに接続する場合の注意
これらのSerial-port出力を持つIC、CPUにおいて、ICに電源が供給されていない状態でCI-VにBUS接続 すると、
TXDのPINから電流が流れ込んで(電流を吸い込んで)、BUSの電圧が論理0と判断する電圧にまで 低下
して
通信ができない場合があります。IC,CPUの個々の出力回路に依存するので、このような場合は ICの電源
OFFの場合はCI-Vと切り離すか、常に電源が加わった状態にする必要があります。