アマチュア無線局の雷害対策について解説します
最終2020.12.30
毎年、数人から雷害でRTC-59等が壊れたとEmailが来ます。たぶん、雷に対する対策ができていないのが要因と思っています。
雷電流によってアマチュア無線局の設備が壊されるのは次の要因です。
1.商用電源からシャックに雷電流が入りシャックのアース(接地)に流れる
シャックの無線設備等でアース(接地)していない場合は、同軸ケーブルを通してタワーに流れる。
商用電源の柱上トランスでは、200Vのセンター(100Vの片線)が電柱に添わせて電線で接地されています。
では、なぜ電柱で接地されているのに無線局の接地に対して雷電流が流れるのか不思議に思う方も多いと思います。
これは、大地の抵抗が0Ωではなくて、わずかな抵抗値を持つからです。土質によって当然に抵抗値は異なりますが
一般的に、落雷した場所から300m程度離れると地電位が0電位になると言われています。
電柱に落雷があると、その場所の地電位が上がり、外部に向かって雷電流が流れて300m程度離れた場所で地電位が0Vになる。
落雷があった電柱からの引込線を経由して各家庭に雷電流が向かい接地されていれば、その接地点に向けて雷電流が流れます。
雷電流は、アマチュア無線の機器以外にも、電話線や家電機器に流れ込んで大地に向かう場合もあります。
これを防ぐには、耐雷トランスで機器と商用電源間をアイソレーションするしかありません。
雷が発生する前にアンテナの同軸ケーブルを切り離す方もいますが、機器自体がその場所で接地されていれば被災します。
耐雷トランスは、1次/2次巻線間に銅板が巻きつけられている絶縁トランスで、この銅板を接地して雷電流を
内部に入らないようにする。
耐雷トランスは高価なので、一般の1:1(200Vから100Vを作る場合は2:1)の絶縁トランスを使うことでも
効果があります。
UPSを利用する。
多くのUPSは、雷ガード機能を持っています。無線機器に接続する物の電源をUPS経由にすることを強く勧めます。
私が使っている(受託している企業のサーバー等も)のは、APCのUPSで400,550VAの物です。
Amazonでも¥15,000程度で売られています。
2.アンテナおよびタワーから同軸ケーブル経由でシャックに雷電流が入りシャックのアース(接地)に流れる
シャックでアースをとっていれば、タワーの場所とシャックのアース間の地電位差で雷電流が流れて機器が被災する。
シャックでアースをとっていなくて、上記の絶縁トランスがない場合は、電柱の接地に向けて雷電流が流れます。
この場合、無線機器等のアースも接続されているし各無線機器のUSB・232Cケーブル経由でPC,LAN-HUB等も被災する
ことがあります。
3.どうすれば雷害を防ぐことができるか
直撃雷では防ぎようがないでしょうが、少々の誘導雷なら次の方法でほとんどの場合大丈夫です。
(1) 上記の商用電源と無線機器の電源間に耐雷(または絶縁)トランスを入れる
リニアアンプの消費電流が大きくてトランスが入れられない場合は、運用時以外Relayで2線とも切断する。
私は、3相の動力モーター用の結構大きな電磁リレーを使っています。
雷で動力用モーターが壊れたのを聴いたことがないです。
常時商用電源に接続する機器の電源は、さらに雷ガードを持つUPS経由で接続する。
私は、Ham用PC、RTC-59+RCC-59_DC、SteppIR-SDA100、13.8V電源をUPS経由にしています。
私のリモートシャックの構成はこのLinkです。
(2) アンテナ・タワーでの対応
タワー直下にアンテナ切換Relayを設置し、運用時以外は同軸ケーブルの芯線は接続しない。
同軸ケーブルの外被は、タワーに接続するとともに直下で接地する。接地抵抗は可能な限り接地抵抗を小さくする。
(3) シャックでの接地はしない
シャックの機器のGNDはまとめて、タワーの接地に接続して、いわゆる1点アースにして同電位にする。
(シャック内機器のGNDとアンテナ・タワーを同電位にして雷電流がシャック内に入らないようにする)
(4) USBアイソレーターの使用
PCにUSBで無線機等を接続する場合は、USBアイソレーターを使用する。頒布Pageはこちら
以上を絵にまとめたのがこちらのリンク
長年、無線関連の仕事をしていました。山上無線局と移動体無線通信の基地局の設計・施工・保守に関わってきましたが
これらが被雷による故障になったことは1件もありません。